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どういった変化があるのか

高齢者になると、若い頃にできたことができなくなり、思うようにいかない場面が増えて不安感が募るようになります。また、配偶者との死別などによって孤独感が増すこともあります。これまで仕事などで自分の欲求を満たしていた人は、引退後に大きな喪失感に包まれることもあるでしょう。自分を支えていた社会的地位を失うことで、価値観自体が揺らいでしまいます。高齢者は環境の変化が大きい時期であり、それに伴い心の病を引き起こすリスクも高まります。高齢者に訪れる心の変化として多いのが、「感情のコントロールができなくなる」「不満・怒り・不安といった感情が大きくなる」「孤独感が大きくなる」「無気力・無関心になる」「頑固になる」といったものです。

心身症のリスク

高齢者に限らず、人は誰でもストレスを抱えています。危険なのは、そのストレスを改善しないまま慢性化することです。ストレスを改善しないままでいると、心の病だけでなく、身体的な疾患を引き起こすリスクも上がります。こういった、ストレスに関連している心身の疾患のことを「心身症」と呼びます。心身症は循環器系や呼吸器系、消化器系、神経系、泌尿器系など様々な領域にあらわれる疾患です。心身症を防止するという意味でも、高齢者に寄り添ったケアが求められます。

高齢者のうつ病

高齢者は心の状態が変化しやすい時期であり、悪い方向に向かい続けることでうつ病を発症するリスクが高まります。うつ病は、精神的なエネルギーが欠乏した状態であり、食欲や睡眠欲などの様々な意欲が低下します。高齢者がうつ病を発症するきっかけとして多いのが、ライフイベントと慢性的なストレスです。高齢者のライフイベントには、配偶者との死別や仕事・財産の喪失、家庭内のトラブルなどがあります。慢性的なストレスとしては、身体機能や気力の低下、社会的役割の喪失、経済的な負担などが挙げられるでしょう。また、日頃から服用している薬がうつ病を誘発する可能性もあります。鎮痛剤や抗がん剤、副腎皮質ステロイド薬、血圧降下剤などはリスクが高いです。
高齢者のうつ病は通常のうつ病と症状のあらわれ方が異なります。高齢者の場合、一般的なうつ病の症状に該当する人は3分の1程度といわれています。一方で、症状の一部が強くあらわれる、逆に一部が弱くなるといった特徴があります。そのため、通常の診断基準では見落とされるケースも少なくありません。身体に悪い箇所がないにもかかわらず、本人が痛みや不快感を訴えることもあるでしょう。